最初は50%が不良品(マグネットシートの品質向上)

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最初は50%が不良品(マグネットシートの品質向上)

マグネットシートなどの印刷物に混入する塵・埃への対策に関心ある皆様、こんにちは。
株式会社マングースの渡辺です。

製造業を行なっていて、頭が痛うけどやりがいがあるのは品質向上です。
生産性向上のために重要な項目でもあります。
歩留まりを上げ、ロス率を下げる、すなわち

作る全てを良品にして、不良品を無くす事です。

理想は、検品作業そのものを無くす事です。
多くの業界、多くの日常製品では、ラインの中で自動で全数検品をしますし、抜取り検品のみで製造している場合も多いと思います。

1、最初は お車用マグネットシートの50%が検品で廃棄しました。
この仕事を20年以上前に始めた頃は、製造工程を全く知らず、この業界特有のいろんな装置(ラミネータなど)や素材がある事も全く知らずに始めました。
業界の常識を知らずに、オリジナルの方法と素材で作った事で、結果としてそれが業界の新製品となり今も当社のオリジナル製品として売れ続けています。
しかし、作る半分が不良品という時代もありました。例えば30cm平方に1個の塵・埃では、名刺サイズの製品では、1割が不良品ですが車用などA4サイズの製品では、50%が不良品となります。 製品表面、印刷表面、ラミネートの下に小さな塵・埃が入りました。 直径1mmほどの微細な富士山のような形状の気泡が発生します。 気泡は、特に屋外用・お車用では、時間と共に熱膨張を繰り返して大きくなります。 したがって、気泡は全て不良品として排除しました。

2、「検品を厳しくしないと不良品が無くならない
と、当時のパートさんに話すと、パートさんは「それ違いますよ、反対ですよ、検品を厳しくしたら、どんどん不良品は増えますよ」
確かにその通りですが。検品を厳しくしました。それと並行して。塵・埃が入らなくなる対策を思いつく限り順番に行ないました。

3、きりがない、塵・埃対策
当時の表面加工、印刷表面に透明フィルムを貼る加工はハンドローラーを使いました。今思えばあまりに旧時代的な製法です。 そのせいもあって、製品の多くに埃が原因とおもせれる小さな気泡が発生していました。 そこで次々と対策しました。

① 事務服を「静電気対策済」に変更
製品が届いて見てみると。普通の昔ながらの青鼠色の生地の中に、黒い繊維が入っていました。 どうやら導電性の繊維らしいのですが、何とも頼りない。
実際に使用すると、透明フィルムを貼るPP加工の際に、黒い大きな埃が多数入るようになりました。 例の黒い繊維です。 静電気で服から飛んできたようです。 直ちに使用を中止しました。

② クリーンルーム用のクリーニングローラーを導入
スクリーン印刷の会社で印刷前の掃除作業を見ていると製品の表面をタオルのようなものでサッと拭いています。かえって汚れないかな、と心配になります。
表面クリーニングの方法を調べるとクリーンルームなどで用いる掃除用のローラがある事を知りました。 微粘着ローラーの利用です。 微粘着素材ですが、それでも当社のPETフィルムではガッチリ貼り付いて動かず、使えません。何種類か試して、粘着の強さがさらに弱く、当社のフィルムに合うものを導入しました。 このローラーの使用は、劇的な効果がありました。 しかし、ローラー自体も汚れるので、別の装置でこのローラーをクリーニングしつつ使用します。 使い捨ての粘着ローラーで50mを巻いてあります。
便利で参考になるのは、このローラーをクリーニングする粘着紙の汚れです。 印刷物表面の塵・埃は  印刷表面⇒ クリーニングローラー⇒ 粘着紙  と移動しますので、粘着紙に付いた汚れは、全て印刷表面にあったと分かるのですが、その量がなかなかに多い事。 「印刷面がそんなに汚れていたのか」と改めて思います。

④ クリーンルーム用の白衣と帽子を導入
現在も使用していますが、体の着衣からの埃の排出をどれだけ、その方向でどの部位で抑えるか、など様々な製品があります。 その時に知ったのが、白衣の合わせ目からの埃の排出です。例えば普通の服では前で左右を合わせますが、体を動かすと、この合わせ目から空気が出入りして、結果として埃が噴出します。 実際に作業していて、製品の体の正面と向き合う部分の埃が多い事に気付きます。 理由が分からず不思議でしたが、「合わせ目が原因」と知って、納得しました。 クリーンルーム用の白衣では、この合わせ目を正面から左右に移動したり、あるいは、空気の出入りを少なくするために、二重にした製品があります。 実際に使用すると、塵・埃の発生削減に、明らかな効果がありました。

⑤ 家庭用のエアクリーナを部屋の空気の清浄化に使用
これも効果がありましたが、まだ、埃が残っているようです。

エアクリーナで空気中には無いはずで、しかもこの部屋はかなり密閉されていて外部からの塵の侵入は少ないはずです。

4 試しに天井掃除をした
しかし、それでも残る、塵・埃。「どこから来るのだろう」と考えて上を見上げて、気付いたのは天井についた埃の落下です。 試しにと思ってやった天井掃除の効果は大きく、これで印刷物への埃の侵入をほぼ防ぐ事ができるようになりました。

現在も 塵・埃対策は日々続いています。 現在の製造工程では、屋内用のPP加工の工程ではクリーンルームを使用し、クリーンルーム用の大型の毎分6立方メートルのフィルターを使用しています。
しかし、PP加工の際のローラーさえ行えば、あとは日々の掃除などで十分かもしれません